●ストール・ターン
演技としては前後の水平飛行や引き起こしのRも含まれるのですが、ここでは頂点のターン部分について考えてみます。
●ストール・ターン
演技としては前後の水平飛行や引き起こしのRも含まれるのですが、ここでは頂点のターン部分について考えてみます。
まず、ターンの主要なポイントは、「機体の重心が完全な垂直ラインを描く事」です。
真っすぐに上がり、重心点を旋回軸にしてヨー方向に180°回転して、同じ経路を降りて来なければなりません。
上昇と下降のラインにズレがあればその程度によって減点されます。
重心点を軸に回転→減点無し
半径1/2翼長(経路ズレ1翼長)以内の回転→減点1
半径1翼長(経路ズレ2翼長)以内の回転→減点2〜3
半径1-1/2翼長(経路ズレ3翼長)以上の回転→減点4〜5
半径2翼長(経路ズレ4翼長)以上の回転→ウィング・オーバーとして0点
減点項目としてはこの他に、
ターン開始前のスライド飛行→減点1
ターン中のロール方向やピッチ方向のズレ→15度/1点ルール
旋回後の振り子運動→減点1
と、なっています。
但し、機体が失速している状態において風に流された分は減点されません。(区域外飛行は許されない)
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2013.9.18
それと、ここから先はF3A飛行演技ガイドには細かく記されていない事で、個人的な考えにもなりますが、回転を始めるタイミングの問題があります。
垂直上昇がいくら上手くいっても、ラダー打ちのタイミングが早ければ機体がスライドしたり、経路ズレの原因になってしまいます。
また反対にタイミングが遅れると、自由落下部分が長くなってターン全体の形が崩れてしまいます。
演技ガイドの最初には、『このガイドは全ての演技方法を網羅するものでは無い』とありますが、
より完成度の高い演技の為には色々と細かい配慮も必要と思うのです。
●回転運動中の重心位置の動き
図のa,b,c,dは、重心マークの時を回転スタートとし、矢印先端部分で終了した場合の重心位置の動きを表しています。
簡単に言うと
a. 回転スタートのタイミングが早い
b. 最適なタイミング
c. タイミングが遅い
d. 上死点からの落下
と、なっています。
bの最適タイミングに比べ、aやcは重心の移動距離が必要以上に長くなっているので、左右の経路ズレが少なくても最良の出来とは言えません。
dよりタイミングが遅くなって、重心が後退を始めてから回転する様では、テールスライドの要素が強くなるので、場合によっては0点となってしまう事があります。
小回りをさせる為に、垂直上昇のスピードがゼロになる瞬間に、垂直尾翼の片側に風圧を受ける様に操作して、機体の落下も利用してターンを完了すると言うやり方がありますが、この方法は、落下距離が大きくなるので、やはり最良の方法とは言えないのです。
実機の方では、重心の移動量と減点について、円を使って説明しているサイトがありました。
円なので、上下左右のズレについて対応出来ています。
重心の移動が翼長の半分以内に収まれば減点は無しで、それ以降は翼長の半分ごとに1点ずつ減点が追加されます。
また、この減点量はF3Aの基準とそれ程大きな違いは無いものともなっています。
これに先ほどの、a,b,c,dの例を当てはめてみると、それなりに点数に差がつく様子が分かります。
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2017.11.30
●ターンの出来栄え
ストールターンに関して、アメリカNSRCAのP-19パターンの解説図の中の「P-19.09.02」の上の方に、
「Stop before pivot」「Pivot on CG」と、あります。
同じ様な表現は、P-17の時にもありました。
この中で、「重心上で回転」というのは頷けますが、「旋回の前に停止」ですか?
停止という事は頂点に達したという事でしょうか。
それなら、その後は落下となるので、「落下しながら重心の周りに回転」という事でしょうか?
落下中の回転は、この図だと一番右のdの状態です。
これでは、機体が180°回転する間に大きく高度低下するので、機体の重心を空中にピン止めした様な回転にはなりません。
しかも、もし回転開始のタイミングが遅れ、機体が後退してしまうと、テールスライド演技となって0点となる可能性もあります。
ストールターンの練習を始めた頃の事を考えると、前後左右にパッタン・パッタンを繰り返し、そのうち横に倒す事に慣れ、「ストールターンとはこんなものか」と思ってしまうものです。
また、F3Aの規定には、重心の左右のズレに対する記載があるだけで、実機の様に上下のズレについては触れられていません。
これがF3A流の演技と言われればそれまでです。
でも、たまたま横にひっくり返った様な挙動が「ストールターン」演技では、ちょっと味気ない感じがします。
イラストの左と右のターンで、どちらが綺麗で完成度の高い「Pivot on CG」に見えますか?
FAI Sporting Codeの40ページ、5B.8.11. STALL-TURNSでは、次の様に解説されています。
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5B.8.11. STALL-TURNS
‥‥‥
The model aircraft comes to a stop in forward movement and then must pivot around its centre of gravity (CG) in the yaw axis for the manoeuvre to receive a high score.
‥‥‥
(模型の航空機は前進中に停止し、高得点を得るにはヨー軸の重心 (CG) を中心に回転する必要があります)
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2023.6.1追記
現在のスポーティングコードも上記と変わっていませんし、
P-23のマヌーバーガイドも、次の様に「ピボット前に停止」となっています。
従って、F3A演技としてはそれに従うしか無い事になります。
2023.6.1の追記は以上↑
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ストール・ターンの動画を幾つか集めてみました。
↑ 1:20〜と、3:00〜辺りにストール・ターンあり。(スローモーションも)
後の方では振り子運動も見られるので、減点ポイントの例にもなります。
この時の解説では「停止するまで」としましたが、実際のところは「停止直前まで」の方が良かったかも。
↑ 実機スーパーデカスロンの場合。0:45〜辺り。
ラダーのタイミングをパイロット本人が書き込んでいます。
↑ F3Pの場合。 0:42〜辺り。
限られた空間、無風状態、慣性や空気抵抗など、F3Aとは環境が異なっている中での演技。
軽量でしかも上昇スピードが無いので、頂点近くで慣性や運動エネルギーを利用してテールを振り回す事は出来ない。
それに、テールを横滑りさせて回転させようとしてもテール面積が邪魔をするので、結局は、落下を利用したターンになる。
従って、ターン終了までの重心の上下移動が大きい上記イラストdと同じ感じになる。
トップフライヤーだけあって、巧みにパワーコントロールしているが、ターン中にふかし過ぎると横に飛んで行ってコースずれが多くなってしまう。
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上の動画から6年経った様子が次の動画↓
3:45からのストールターンに注目。
実機と違って模型の競技ルールには「一旦停止」とある以上、それに従っている。
テールスライドせず、且つ回転中に横っ飛びさせない、絶妙のパワーコントロールが行われている。
2ブレードプロペラでは、反動トルクで機体が回されてしまうので無理な話。
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↓こちらはF3Aで無く実機の例。
ターンの開始が早くても遅くても減点ですが、タイミング遅れで落下が大きい方が減点も大きくなっています。
現在のF3Aはこれとは異なっている事に気をつけなければなりません。