●モーターの使い方
今では理屈など知らなくても、道具さえ用意すれば誰でも簡単に電動パワーを手に入れられる時代になっています。
飛行機を飛ばす上ではそれはそれで結構な事ですが、やはり、モーターの基礎を知っていれば、モーター選びやセッティングなどで何かと役に立つものです。
そこで、基本的なモーターの性質や使い方について、ちょっと触れてみようと思います。
まず大事なのが、
「モーターは、エネルギーを生み出すのでは無く、エネルギーを変換する道具である」
と言う事です。
良く「このモーターはパワーがある」と耳にしますが、エネルギーという観点からすれば、モーターにエネルギーはありません。
エネルギーを持っているのはバッテリーであり、そのエネルギーに耐える能力があるかどうかが問題になります。
実際には、「モーターの大きさ」や「エネルギーの変換効率」が重要になって来るのです。
●モーター性能線図
モーターの性質を知る為に役立つのが性能線図です。
通常はマブチモーターの解説にある様に、横軸にトルクをとる事が多くなっています。
これは、モーター試験でブレーキをかけながら全開で回してみて、その時のトルクや、回転数、電流などのデーターを計測してグラフ化した事から、自然とそうなったものです。
でも、我々が飛行機を飛ばす場合には、トルクをいちいち計測したりはしません。
一番馴染みの深いのは電流値です。
これを基準にした方が分かり易くなります。
そこで、横軸に電流値をとった図が下の様になります。
妙に横に長くなっていますが、これは、非実用域まで載せているからで、通常は緑色の近辺だけがカタログで紹介され実用域となります。
それと、この様な描き方をした場合、効率曲線は、左上とロック点を結んだ直線の下側になります。
●効率曲線から分かる事
上図には、巻き線抵抗が異なる3つのモーターを載せてあります。
a: 20mΩ b: 13mΩ c: 70mΩ
これらを緑色の範囲の電流値で使おうとする時、次の様な事が分かります。
aモーター:
効率曲線の高い部分が緑色と重なっているので、ちょうど良い使い方。
軽めの負荷で使う方が効率が良く、重めの負荷は避けたい。
bモーター:
大きめの電流域で使う時にはaモーターよりも向いているので、モーター選びに迷った時に大きく的外れになる事は少ないが、全体的にちょっと電力の無駄飯食いになる。
cモーター:
緑色の電流域では過負荷となって使えない。
それより下の軽い負荷で使うと効率がとても良い。
●要素
この様に、効率曲線を見れば大体の使い方が分かるのですが、この効率曲線を描いている要素が「巻き線抵抗」と「ロック電流」と「無負荷電流」なのです。
巻き線抵抗:
モーターから出ている3本の線の内の、どれか2本の間の抵抗を計測して求めます。
モーターのカタログに記載されている事もあります。
ロック(停滞)電流:
本来回るべきモーターシャフトを固定してしまった時に流れる電流です。
銅線に直流が流れるだけなので、簡単にオームの法則から求める事ができます。
この例では10Vの一定電圧としているので、ロック電流が計算上は500A以上になっています。
でも実際に500A流したらどうなってしまうんでしょうね。
500A×10V=5000W
1000Wの電気ストーブ5台分のエネルギーがモーター1個に集中です。
まぁ、模型飛行機に積んでいるバッテリーやESCではそれだけの電力を供給はできませんが。
無負荷電流:
モーターを空回しさせた時の電流です。
ロック時の直流と違って、コイルに流れる「交流」の影響によって決まります。
コイルの事は詳しく無いので、インピーダンスなどで検索してみてください。
図でも無負荷電流値を少し変化させて描いておきましたが、巻き方だけを変えた兄弟モーターでは、ターン数を少なくして巻き線抵抗が下がると、無負荷電流が大きくなります。
無負荷電流が大きくなると効率曲線のピークが低くなり、無駄飯食いになって来ます。
温度変化:
銅線は温度が上昇すると抵抗が大きくなります。
上図は室温のままで描かれたものですが、実際は温度上昇で巻き線抵抗値が大きくなるので、線図の横幅が狭められた形になります。
例えばbモーターなら、aモーターの様になってしまうという事です。
参考 温度変化による抵抗の変化
計算してみると、数%どころか何割と言う変化があるのが分かります。