ピッチスピードの不思議
地上でプロペラが回っている時の後流を見ていると、「プロペラは空気を後方に押しやって推力を発生し、当然、高速飛行中でもプロペラ後流を吹き出しながら飛んでいる」と思ってしまうものです。
でも、ロケットエンジンなら噴射の反作用で推力を得るのでしょうが、プロペラの場合は状況が異なっていて、プロペラも翼として働いていると考える必要があるのです。
つまり、プロペラ・ブレードは、揚力を発生してそれが推力となっているのであって、空気を押し出すのが目的では無いという事です。
これに関連する事で、ピッチスピードの話があります。
ここで言うピッチスピードとは、プロペラがネジの様にピッチ分だけ進むと仮定した時のスピードの事で、ピッチと回転数を掛け合わせた数値です。
これが不思議な事に、実際のスピードと比べると、実測値の方が3割ほど速くなっていたのです。
(※後述:地上回転数との比較だったので正確さに欠けていた)
この辺の事は、昔、尾島で電動機の集いを開催していた頃の、「50プロダクト掲示板」に記してあるので、下記にも転載しておきます。
それで、この結果から何が言いたいのかと言うと、
ピッチスピードより実際のスピードの方が速いという事は、最初にある「高速飛行中でもプロペラ後流を吹き出しながら飛んでいる」という事はちょっと有り得ないのでは無いか、と言う事です。
飛行状態は様々であるし、またパワーソースも、GP、EPと、色々なので、状況はそれぞれ異なるかもしれませんが、時代と共に使用ペラも変化しているので、ここでもう一度ピッチスピードという点からプロペラの働きを考えてみるのも面白いかもしれません。
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ここからは、2004年の「50プロダクト掲示板」からの引用
●飛行スピード
今回の集いのチャレンジコーナーでは、パターン機のスピードも測ってみました。
熊谷さんのSCAT(24NiMH3300):フライト初期170km/h
水谷さんのエボリューション(24NiMH3300):フライト後半で144km/h
私のマーチ540(6NiMH3300):初期で100km/h
この他にスピードガンで測った参考記録で
才川さんのアビオニックF5D(8N1300):180km/h
という結果でした。
3kg台のパターン機ともなると結構なスピードで飛んでいるのですね。 風が無ければ、ゆっくり飛ぶ方が優雅で良いのですが、風のある時はそうも言ってられませんし、パターン機がどれくらいのスピードで飛んだら良いかは、いろんな要素が絡んで来るので、難しいものがあります。
ピッチスピードの不思議
私のマーチの水平飛行スピードは、大体90km/h台は出ている様です。
ところが、プロペラピッチ×回転数から計算したスピードを比べてみるとちょっと変な事になっているのです。
マーチの使用ペラは12*6E、初期回転数は7800rpmなので、仮にピッチと同じにペラが進んだとすると、
6(in)×0.0254(m)×7800(rpm)×60÷1000=71.3(km/h) でしかないのです。
プロペラはネジと違ってピッチと同じに進む訳ではありませんし、回転数も上空で変わるのは当然なのですが、それにしても、かなり違っています。 実際の方がスピードが出ているのです。
私は細かい調査や分析など出来ませんが、もし、飛行中のプロペラ回りの空気の流れを調べたり、ペラ回転数やバッテリーの電圧電流などを測る事が出来たら、何か面白い事が分かりそうです。
ピッチスピードの不思議 その2
私の機体の例だけでは不十分かもしれないので、熊谷さんのSCATについても計算してみました。
使用ペラは14.4*10.5、初期回転数は8200rpmあたりとして、仮にピッチと同じにペラが進んだとすると、
10.5(in)×0.0254(m)×8200(rpm)×60÷1000=131(km/h)
やはり、実測値170km/hには及びません。
実測値÷ピッチスピード を計算してみると、
マーチ 100÷71.3=1.4
SCAT 170÷131=1.3
と、3~4割も違っています。
ピッチスピードの不思議 その3
算出速度と実測速度の違いについて寺田さんに伺ってみたところ、「それは普通の事で、プロペラに当たる空気の角度やペラ回転数増加分で説明がつくはず」との事でした。
プロペラについて考える時のポイントとしては・・・
・プロペラは翼である。
・飛行機が主翼の揚力を利用して飛ぶのと同じ様に、プロペラで発生した揚力が推力となっている。
・「空気を後方に押しやった反動で飛ぶ」と考えない方が良い。
・揚力は下面の正圧と上面の負圧を足したものだが、負圧による力の方が正圧の分より断然大きいので、特に上面側が大事。
・・・等の事があるそうです。
私としては、「プロペラ断面は上面が彎曲している翼型なので、多少のマイナス迎え角でも揚力は発生するとしても、ちょっとマイナス過ぎるのでは」と思っていたのですが、、、。
寺田さん、アドバイスありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー引用終わり
2019.3.16
上の記事を見た方から、「似た様な経験をして仲間とやりとりした」と知らせていただいたので、了解を得て下に記載しておきます。
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<MAIL1>
昼間の話はこんなことから始まったのです
Energic-Eの速度を計測したいと思って添付画像のGPS速度計を買ったのですが
取付ける時気が付いた フルカーボンの為測れない(当たり前か、、)のでFoxに取り付けた
(Fox結構スピード出ます 上から突っ込ませて180Kmくらい)
水門付近から北に向かって水平に加速した所10500rpm、135Kmくらいになった
eCalkでは水平速度は最高115Kmとなっていたので???
帰って計算してみるとピッチ速度を上回ることが分かった 変な現象ですね
この差をどう説明するのがよいのか? 計測誤差・追風・ピッチ誤差???
(上空回転数)10500×8(インチ)×2.5×60/1000000≒126Km
なので不思議に思いNET徘徊してみると同様な現象についていろんな解説あり
https://denkado1.jimdo.com/技術情報/ピッチスピードの不思議/
こういう話が出てくると言うことは、理由はいろいろあろうが、こんな事例がそこそこあるのだろう
正統派の解説は↓ 当然そういうことだと思っていたのに
参考までに○○会員に聞いたところ↑と同様な説明
100%を超えることは無い 追風のせいではないか?
実機では水平速度はピッチ速度の80~90%と言われているとのこと
CASTLEのESCは具合良いよ ↓テレメトリーリンクを使うとこんなことが出来る
http://www.castlecreations.com/en/telemetry-link-for-sbus2-010-0152-00
Txの画面・スピーカーでリアルタイムモニタ出来る
これらの数値はESCとPCを繋いでLOGが取れる グラフ化ソフトも付いてくる
<MAIL2>
今晩は、〇〇です。
計算に使われたピッチの誤差が大きかったため、計算速度が低くなったと思われます。
有効ピッチはプロペラだけでは決まらず、機体によっても変わってきます。
また、広い速度レンジに適応させるために必ずしも等ピッチ分布では作られていなかったりします。
模型のプロペラに示されたピッチはあくまでも参考値程度かと思われます。
計測された内容からわかるのは
速度と回転数から、今回の機体での有効プロペラピッチは8.4inch程度と言うことではないでしょうか?
速度計の精度を検証するのであれば、車に積んで走ってみるのが手っ取り早いかと思います。
門倉さんのレポートにあった実速度3割増しの話は
プロペラピッチ誤差に加え、静止推力での回転数を用いて計算されたためかと思います。
でも、「水平飛行の最高速は、静止推力時の回転数を用いたときの3割増し」と言うのは
大雑把な目安として有効なのかもしれませんね。
<MAIL3>
以下のことからも正しくチューニングされた空気抵抗が小さい良い電動機に
ついてはそんなことかもしれませんね
*モーター負荷の目安はkv値から計算された回転数の80~85%を地上回転数とするので
上空負荷減少→バッテリ負荷減少→電圧上昇→kv値近傍の回転数まで上昇する可能性あり
*プロペラピッチが均等分布ではないことから高速域では高ピッチ部分が効いてくるのかも
*角倉さんの場合スピードガン計測なので上から突っ込ませた状態で計測しているかも
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーメール引用終わり
色々と情報ありがとうございました。
航空工学講座 プロペラもとても参考になります。
「電動機の集い」でのスピード計測は、スピードガンを使ったものもありますが、その多くは、200m区間の飛行時間から計算で割り出したものです。
ダイブで勢いをつけたものもあったりするので、電動パワーだけで引っ張り出したスピードとは、ちょっと違っていました。
なので、地上回転数と比較する事自体、おかしな事ではありました。
スポーツ機、とりわけパターン機では上昇中の引っ張りを重視するので、地上での計測で十分と思っていましたが、上空での様々な状態での働きを調べてみるのも面白そうですね。
例えば、上記のマーチは、
ダイブ後はほぼ無負荷回転状態だったのか?
200m飛行しての平均スピードが上記という事は、その間、無負荷回転状態で飛行していた? 等々
刻々と状況が変わりそうなので、データ採りは大変かもしれません。
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2019.9.28
実際に機体に回転計を取り付けて、飛行中のプロペラ回転数を測ってみました。
飛行スピードについては、同じ機体での計測ではありませんが、150m区間の通過時間から割り出したものです。
APC15×8E
地上回転数 6400rpm
中速巡航時 5600rpm以上
全速水平飛行 6900rpm
垂直上昇 6200rpm
垂直下降 3300rpm→5400rpm(スロットルOFF、ESCはブレーキ無し)
地上静止時に比べ、上空の水平飛行では8%の回転増加があった。
垂直上昇では3%の回転低下があったが、バッテリーの消耗もあるので、地上とほとんど変わらないとみても良さそう。
垂直下降は、ブレーキの無いESCなので、空回りの度合いが大きい。
ブレーキをかけて回転数を半分程にすると、空気抵抗を増やせる。
そして、今回の目的のプロペラ・ピッチスピードと実測値の比較は、
8in×0.0254×6900rpm×60=84km/h となって、やはり実測値90〜100km/hには及ばない、
という結果でした。